長崎市への原子爆弾投下と、ソ連ロシアによる北方領土への侵略開始から73年を迎えました。本稿執筆の前に、犠牲になった多くの兵士・民間人に深く哀悼の意を表します。

さて、今回は北方領土問題を取り巻く深刻な問題について、ひとつ問題を提起します。一見すると何気ないことに思われるかもしれませんが、この問題は日本の領土保全に深くかかわってきます。


テレビ番組の世界地図

近年、海外でロケを行うテレビ番組が増えてきました。そういった番組を見る中で、いつも気にしているのが「国境線の描き方」と「国の色分け」です。この二つの描写は、放送メディアと制作側のスタンスを反映しているといっても過言ではありません。これは新聞各紙にもいえます。

各メディアは基本的に、世界地図や領土問題の状況を踏まえて地図を描写しています。たとえばエジプトとスーダンが領有権を主張する「ハラーイブ・トライアングル」は大方点線ですし、カシミールも媒体によっては実線ではなく点線になっています。

しかし、なぜか領土問題を抱えているにもかかわらず、それが「なかったように」されがちな場所があります。日本政府が一部領有権を主張する北方領土です。

かつて日本が領有した台湾も、少し前までは中華人民共和国の一部として扱われることが多々ありました。いうまでもなく、中華人民共和国は台湾領有の実績がないため誤った描写です。近年では抗議活動が功を奏して、台湾を「一国」とする描写が増えています。

その一方で、北方領土問題の一角をなす樺太はどうでしょうか?


テレビ媒体の樺太認識 おおかたロシア領化を追認・既成事実化

名前は伏せますが、あるテレビ番組では樺太が「ロシア連邦サハリン州」として紹介されていました。たしかに、この表記は間違っていません。もっとも、北緯50度線以北に限った話ですが。しかし実際には、50度以南の豊原をロケ地としていました。

また別の番組では、樺太の北緯50度線に何も線が引かれていないのを確認しました。テレビ番組や新聞上で、北緯50度線を無視するケースは多々あります。むしろ、50度線を引いている方が少ないのではないでしょうか。


余計な配慮が領土をむしばむ

このように、とくにオールドメディアが樺太問題を異様に軽視する理由として真っ先に考えられるのが、SF講和条約による「南樺太・千島列島の放棄」に他ならないと思います。

外務省の公式見解では、南樺太・北千島(得撫~阿頼度島)帰属未定の地と定められています。ですから、学校の世界地図では、北緯50度以南の南樺太・得撫以北の千島列島が白塗りになっているのです。

放棄した「白塗りの地」を軽視して、領有権を主張する「四島」だけを重視することで、ロシアに対して領土拡張欲がないことを示し、返還交渉を円滑に進めようという意図があるのでしょうか。

樺太カラー地図
しかし、ロシアは樺太島・「四島」を含む千島列島を、一つの枠組みとして認識しているといっても過言ではありません。事実、北方領土全域がロシア連邦サハリン州の実効支配下にあります。

よって、日本メディアに蔓延する樺太軽視は、結果として「四島」返還に何も繋がりませんし、北方領土問題でロシアを利することに繋がるのです。


次に考えられる理由は、ロシアへの配慮です。ロシアに限らず、日本メディアは近隣の反日国に対して、異様に配慮する傾向があります。

「帝国主義が台頭した時代、日本はアジア諸国に悪事を働いたのだから、戦争に負けた以上、配慮という形で贖罪し続けねばならない」と考えが根幹にあるのでしょう。この思考形態は歴史教育でいうところの「自虐史観」に繋がるところがあります。

この思考形態を北方領土問題にも当てはめることは、すなわち、日本の北方開発史をまったく理解していないことの証左でもあります。


いずれにせよ、樺太の不法占拠を追認する表現が目立つのはいただけません。はたして、国益を損ねることが「自社の利益になる」のでしょうか。

ここで放棄したか否かは関係ありません。なぜならば、不法占拠を追認しないことがすなわち、放棄した地の領有権・請求権の再主張には繋がらないからです。


DSCN0617.jpg
▲北緯50度線が無視された一例
政府レベルでの領土問題交渉が停滞している今日、領土問題の根本を活発に伝えるべきなのは、報道機関ではありませんか。

しかし、どちらもロシアに配慮するがために、多くの国民が領土問題を誤認してしまい、結果「北方領土はロシアのもの、しかも誰も住まない場所は必要ない」という考えが増えつつあります。本当に残念なことです。


やはり歴史教育の正常化が重要

国益を損ねるメディアが多い以上、報道を通した領土問題の啓発は望めません。北緯50度線が無視される今となっては、樺太の国境線に対する何気ない疑問を抱く機会も少ないでしょう。

だからこそ、北方領土問題を解決するためには、ふざけた共同開発事業に走るよりも、まず教育から変えていくべきです。今日の歴史教育で樺太は、日露交渉の舞台としての扱いが重視される一方、ロシア到達以前の状況は殆ど扱われていません。

樺太はロシア人よりも先に日本人が実効支配して、北海道と同じように統治していった事実は、決して無視すべきではない事実です。この事実を教育に取り込んでこそ、ようやく「樺太は日露戦争でロシアから奪い取ったもので、WW2に負けてロシアに取り返された」という誤った認識が改められるでしょう。

歴史教育が変わらないにしても、正しい樺太の歴史を知る日本人が、それを多くの人に知らしめることはできます。樺太問題の火を消してはいけませんし、それが完全に消えてしまったら、次に消えるのは北方領土問題そのものです。

言い換えると、単に四島返還を念仏のように唱えるだけでは、北方領土問題への理解者はただ減る一方になるということです。


(オマケ) 使用を避けるべき樺太・北方領土関連用語集

上で述べたように、世間には北方領土問題に疎かったり、問題をないがしろにしたりする日本人が少なくありません。そういった方が用いる言葉の中には、個人的に嫌悪のある単語が散りばめられています。

私自身、以下の単語は極力使用しないように努めています。北方領土を扱ううえで、ほんの微量でも参考になれば幸いです。


●サハリン Sakhalin
樺太島を指すロシア語。

ツングース系言語からの借用語とされており、戦前の日本語文献では「サガレン」と書かれることもありました。南樺太を単に樺太と呼ぶのに対して、北樺太に限ってサハリン・サガレンと呼ぶこともあります。

なお、中国語では「庫頁」といいます。

多くのメディアが樺太島の呼称をサハリンに置き換えており、自治体(稚内市)・学者・個人レベルでもサハリンと呼ぶ日本人が増えています。安易に「侵略者」の呼称を受け入れる現状を、きわめて残念に思っています。はっきり言って気味が悪い。


●南サハリン
北緯50度以南の南樺太そのものを、南サハリンと呼ぶ場合もあります。樺太関連用語で最も使いたくありませんし、見聞きして一番強い怒りを感じる単語が、この南サハリンです。

使っているのであれば、すぐさま使用をやめてください。気味が悪いです。


●日本統治時代
日本統治時代と聞いたら、どうしても外地統治を思い出します。あきらかに台湾・朝鮮・関東州と、樺太・千島(註)を同列に扱っているように思えてならず、樺太庁時代を表現するするうえで使用を避けています。

両者の実効支配に至るまでの経緯は異なるため、混同すべきではありません。何かしらの区別をつけるのが望ましいと考えた結果です。

(註)北千島は樺太千島交換条約で獲得しているため、厳密にいうと領有背景は台湾・朝鮮・関東州に近い。


●引き揚げ
これも「日本統治時代」と同じ理由で使用していません。個人的には「(強制)追放」「(強制)退去」と言い換えています。

執筆:2018年8月




にほんブログ村 鉄道ブログ 鉄道旅行へ にほんブログ村 旅行ブログ 旅日記・旅の思い出へ
にほんブログ村 にほんブログ村 地域生活(街) その他ブログ ゆるキャラへ

「ご当地」の魅力をより多くの方にお伝えするため、ブログランキングに参加中です。

バナークリックの方もよろしくお願いいたします。



上のリンクからチャンネル登録できます。台湾旅行に興味のある方、レイルファン・ご当地キャラファンの方、どうぞ気軽にお立ち寄りください。




スポンサードリンク