2016年1月16日、台湾では4年に1度の総統(大統領)選挙・立法委員(国会議員)選挙が行われました。

総統には蔡英文氏が当選し、中国国民党(以降、国民党)の朱立倫氏と300万票近い差をつけての圧勝となりました。これにより、女性初の総統が誕生することになります。

立法委員選挙に目を向けると、やはり民進党が大躍進を遂げ、過半数の議席を獲得しています。同時に新党「時代の力」(時代力量)が、国民党に不満を持つ若者層の支持を得て、第三党に躍り出ました。国民党は史上最大の敗北を喫し、約30議席をも失うことになりました。

投票率の低下・政治的無関心の蔓延が問題視されている日本とは対照的に、台湾では選挙熱が凄まじく、毎回お祭り同様の盛り上がりを見せています。本籍地で投票するようになっているため、選挙の時期になると、帰省する有権者で駅・バスターミナルがごった返します。投票率は2000年をピークに減少しつつありますが、それでも66パーセントと、日本よりもはるかに高水準です(『連合報』)。

今回の選挙動向・結果について、以下くわしく見ていきます。

総統選

『自由時報』より。敬称略

蔡英文(民進党)―6894744票(56パーセント)当選
朱立倫(国民党)―3813365票(31パーセント)
宋楚瑜(親民党)―1576861票(13パーセント)


総統選が告示された時点で、すでに蔡氏優位の状況でした。当初、国民党は女性の洪秀柱氏(中国人)を候補者としていましたが、彼女は中華民族主義の持ち主であり、過激な反台湾的発言を展開していました。支持率は低いままにとどまり、国民党本部との歩調は合わず(小笠原欣幸氏)、その結果候補者の変更が行われ、朱氏に差し替えられました。

候補者に内定した朱立倫氏は新北市長・国民党主席であり、やはり中国人です。当初、彼は総統選に立候補するつもりではありませんでした。余談ですが、彼は日本統治時代について「感謝するわけがない」と述べており、やはり典型的な在台中国人。相当な反日家であることを匂わせています。(『ニュートーク』「台灣人感謝日本人統治?朱立倫:絕無此事」)

ただし、在台中国人すべてが反日とは限らないので、くれぐれも誤解されないよう。

低迷する国民党―対中従属化のツケに他ならない

国民党候補者の差し替え後も、蔡氏の支持率優位は変わらず、国民党の支持率が回復することはありませんでした。期待を散々に裏切り、台湾征服をもくろむ中国に接近・もみ手ばかりした国民党に、有権者はnoを突き付けたのです。とくに馬英九総統は、選挙時だけのパフォーマンスで支持を取り付ける一方、当選後は真逆の行動をとってきました。これが何度も続くと、さすがに有権者は国民党に不信感を抱かざるを得なくなります。

国民党の支持率低迷には、もう一つの背景があります。それが若者層の不満です。

是日治還是・・・
大学生を中心とする若者が立法院を占拠した「ヒマワリ学運」後、国民党・馬総統は彼らの主張を聞くどころか、真逆の行動(対中接近)を続けました。任期は残す所1年、馬総統にはこれ以上失うものがなかったからでしょう。若者の怒りは収まらず、グリーン陣営・民進党はさらに躍進するところとなりました。

国民党支持層ですら、国民党に対する不満を強く感じているようです。それが宋楚瑜氏(中国人)の得票率から見てとれます。前回(2012年)総統選の得票率は僅か3パーセントでしたが、若干増加して15パーセントになっているのが分かります。

親民党は国民党から分かれた政党で、国民党と同じブルー陣営に属します。このことから、国民党支持層の票が一部、宋氏に流れた可能性があります。

立法委員選(定数113) 概要

 政党名 小選挙区 比例代表区 原住民議席 総議席数
 民進党 49 18 1 68(60%)
 国民党 20 11 4 35(31%)
 時代の力 3 2 0 5(4%)
 親民党 0 3 0 3(3%)
 無党団結連盟 0 0 1 1(1%)
 無所属 1 0 0 1(1%)
 総議席数 73 34 6 113


上のグラフは、政党別に獲得した議席数を表したものです。

民進党が初の単独過半数を得た一方、国民党は議席を大きく減らしました。時代の力は小選挙区で3議席、比例代表区で2議席を獲得し、得票率では親民党に僅差で及ばなかったものの、小選挙区で一議席も獲得できなかった親民党よりも多く議席を得て、第三党に浮上しています。

原住民議席に目を向けると、国民党が6議席中を4席を獲得しており、従来通り同党が強いです。やはり国民党にとって、原住民が主要な集票源であることが分かります。

小選挙区

 政党名 民進党 国民党 時代の力 無所属 定数
 台北市 2 5 1 0 8
 新北市 9 2 1 0 12
 基隆市 1 0 0 0 1
 桃園市 3 2 0 1 6
 新竹市 1 0 0 0 1
 新竹県 0 1 0 0 1
 苗栗県 0 2 0 0 2
 宜蘭県 1 0 0 0 1
 花蓮県 1 0 0 0 1
 台中市 4 3 1 0 8
 彰化県 3 1 0 0 4
 雲林県 2 0 0 0 2
 嘉義市 1 0 0 0 1
 嘉義県 2 0 0 0 2
 台南市 5 0 0 0 5
 高雄市 9 0 0 0 9
 屏東県 3 0 0 0 3
 台東県 1 0 0 0 1
 澎湖県 1 0 0 0 1
 金門県(福建) 0 1 0 0 1
 連江県(福建) 0 1 0 0 1


今回、民進党はすべての選挙区で議席を維持、または前回よりも多く獲得しましたが、国民党は多くの選挙区で議席を失うことになりました。それでも客家・原住民の国民党支持はあついようで、民進党はこれまで通り、彼らが多く分布する苗栗・南投2県で議席を得ることはできませんでした(民進党は新竹県選挙区に候補者を擁立していない)。

ただし、2県の得票率を見ると、いずれも民進党候補の得票率が国民党のそれに差し迫っていますし、総統選の得票率に至っては、民進党に軍配が上がりました。やはり国民党の牙城だった花蓮県選挙区では、民進党の候補者が当選しており、徐々に国民党の支持基盤が崩壊していることが窺えます。

台北市選挙区では、惜しくも国民党候補者にリードを許すことになりましたが、それでも前回選挙と比較すると、民進党は1議席多く獲得しています。新北市選挙区では、7議席分も増やすという大躍進ぶりを見せました。北部でも徐々に、グリーン陣営系の勢力が広がっているようです。

金門・連江両県は台湾というよりも、むしろ中国に限りなく近いですから、民進党・グリーン陣営が強くなくても何ら不思議ではありません。

長らく国民党による政権が続きましたが、5月20日から久々の民進党政権が発足します。

馬英九氏や国民党による対中接近に、多くの国民が怒りを覚え、かつ台湾人意識に目覚めていったはずです。中国に従属しない一国家として、台湾がどれほど一皮むけるかどうか、今後も目が離せません。

2300万人の正義に敬意を示し、シメの言葉とさせていただきます。
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  コメント
分析記事、ありがとうございます。

現政権下では、大企業だけが利益を得ているようですね?
http://dd.hokkaido-np.co.jp/news/opinion/editorial/2-0040193.html
やはり、それへの一般市民階層の反発もあったのでしょうか?

国民党は、大陸従属もありますが、この記事の写真にあるように「日據」とあるなど(どなたかが「日治」と書き直しているとはいえ)、対日関係を軽視してきたようにも感じます。

ただ、貴記事で関心を持ったのは、地方によっては国民党が強い地域もあり、意外には思います。

金門・連江両県は、位置は当然として、交流も大陸とのほうが主体なのでしょうか?
「三通」政策で直通の交通機関もあるのでしょうか?


とはいえ、蔡氏は、陳水扁氏のように、協力な台独は進めないようにも感じます。
http://dd.hokkaido-np.co.jp/news/opinion/editorial/2-0040193.html
レラティー #rcEo15nI [ 編集 ]    2016年01月17日(日) 21:32
レラティーさん
仰る通り、「脱中華民国」色は年々薄まり、現在の民進党は「現状維持」というスタンスに落ち着いています。強大な軍事力を持ち、現在進行形で周辺国に侵略行為を続ける中国に対して、「台湾は中国(=中共)どころか中華民国ですらない」と新たなスタンスを示すほどの力がないから、と言っても過言ではありません。
だからこそ、日本人は中国側の宣伝文句に従属することなく、台湾をよき隣国として認識し、傍らから援護する必要があるのです。

金馬両地方は地理的に、台湾との交流を強めようとしても、かなり難しい所があります。今では金門~アモイや馬祖~福州とを結ぶ船が通っていますから、あの地方に住む人々は中国に依存せざるを得なくなっているでしょう。私も現地に出向き、いずれ実態を探ってみたいと思っています(ブログジャンル欄は「中華民国」で)。

国民党政権にとって、日本など隣国は眼中に在りませんでした。あるのは「中国」だけで、隣国どころか中華民族主義を共有する「同胞」としての認識でした。おかげで馬政権の8年間、台湾は急速に対中依存を強めていきました。台湾には自営業が多く、レストラン業界もチェーンが非常に少ないです。零細事業者が不満を抱いても何ら不思議ではありません。

東台湾は西部に比べ、家の造りや街並みが日本に近い傾向にありますが、反日を標榜する国民党を支持する住民が多いとは、何とも皮肉なことです。
wra #9MBBB9Tg [ 編集 ]    2016年01月17日(日) 21:57
この結果が
台湾にとって吉と出るか凶と出るか?


対中の政策が一番の課題であろう事は想像がつきますけど、良い方向に行けばいい、そう思う人は少なくないでしょうね。


気がかりなのは、民進党の実力でしょうか。我が国の民主党レベルであったら、台湾そのものの存続に関わるでしょうからね…。そうならない事を祈りたいものです。
焼きそば #t50BOgd. [ 編集 ]    2016年01月18日(月) 01:33
焼きそばさん
以前民進党が政権を握っていたとき、汚職が横行していたようで、これがもとになり同党の求心力は失われていきました。民進党に自浄作用があることを信じるばかりです。

残念なことに、民進党は「従軍慰安婦の強制連行があった」という認識を示しているほか、尖閣諸島は「中華民国」領というスタンスを有しています。国民党による歴史捏造に加担することが、どんなに愚かなことか気づくことが、今後の対日関係のカギになると思います。

もちろん、対中関係も見逃すわけにはいきません。当の中国は、台湾も自国領だと長年主張してきましたが、それを台湾から援護射撃する勢力が今回の選挙で野党に転落しました。中国の軍事的動向に警戒しつつ、台湾側は「中国に従属しない一国家」というスタンスをブレずに持ち続けるか、今後の政権運営にかかっています。

そのためには、周辺国家が台湾の窮状を理解し、中国の横暴を許さない環境を作る必要があると思います。
wra #9MBBB9Tg [ 編集 ]    2016年01月18日(月) 16:10
台湾総統選
台湾総統選、蔡氏優位だったとはいえダブルスコアに近い差がついてし
まいましたね。それだけ国民の間に危機感が強かったことが窺えます。
中国の軍事的脅威に加えここ最近の中国の目も当てられない経済失速も
影響したのでしょう。中国の横暴を許さない環境を作るには日本の支援が
不可欠ですが、外務省があの体たらくですから。政治の力に期待したいと
ころではありますが・・・・
影武者2号 #YH9wa2gA [ 編集 ]    2016年01月18日(月) 20:10
影武者2号さん
まず、日本人の政治意識を変えるところからやっていく必要がありそうですね。

今の日本人は老若男女問わず、その多くが「何をやっても政治は良くならない」という一種の思考停止に至っています。彼らは生活と政治を完全に切り離そうとして、そう考えているようにしか見えないのですが、そんな事などできるわけがありません。選挙に行って投票しないことは、なんとも愚かなことです。

とくに若者層、まずは意識変革をすべきです。今夏の参院選で一票を投じることが、日本のためにもアジアの平和のためにもなると思います。かなり大きなことを言っているようですが、一人一人が大きいことを考えないと、今の日本は絶対に良くなりません。
wra #9MBBB9Tg [ 編集 ]    2016年01月18日(月) 23:08
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