JR九州初の蓄電池電車・819系の運転開始で賑わう若松駅横には、一台の蒸気機関車が保存されています。その名も19633号機といい、大正時代を代表する貨物機・9600形の一員にして、九州の9600形保存機の中でも最若番にあたります。

そんな同機は長らく修復されないまま、潮風に吹かれ続けてきました。そのせいで車体は朽ち果て、一部部品は悲しくも崩れ落ちています。その姿は現存しない、唐津市の69608号機を彷彿とさせます。今回はもはや保存車両とは呼べない、19633の現状について取材しました。

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▲19633号機全景
2000年代後半期、すでに荒廃は進行していました。あれから6~7年、車体は依然として整備されていません。この様子だと、10年以上も手を加えられていないようです。

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▲19633号機のボイラ付近を眺めて
塗装の上に雨だれができ、さらに塗装がはがれ落ち、それでも放置が続いた結果、鉄板の風化が進んで穴が開きました。下地を落とせば、きっと穴だらけに違いありません。こんな機関車など、子供たちは絶対に怖がって近づかないでしょう。

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▲19633号機キャブ周り
キャブへの立ち入りが禁止されて久しい現在、キャブの荒廃も一層と進みました。床板の鉄板は無残にも崩れ落ち、その様はまさに廃墟同然でした。

中でも一番驚いたのは、立派な雑草が生えていたことです。頑丈な鉄板でできた機関車も、荒廃が進めばこのように植木鉢と化してしまいます。

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▲19633号機テンダーを眺めて
10年近く前からテンダーに存在した大穴は、ますます広がっていました。足元には錆びた部品が鉄粉になって積み重なり、多くの部品が崩落しているようでした。これでは保存ではなくもはや放置です。

保存を始めた当時の志はいったい、どこに行ってしまったのでしょうか。これは北九州市だけでなく、日本各地の保存機を抱える自治体にいえることです。

近年、北九州市は「明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼、造船、石炭産業」の世界遺産登録を契機に、近代の産業遺産を観光資源に活かそうと取り組んでいます。その取り組み自体は、人口減少に苦しむ北九州の産業活性化という点で評価に値しますが、その一方で、十分に産業遺産としての価値ある史料を活用できていない部分もあります。

今回取り上げた19633号機もその一例といえましょう。

撮影日:2016年10月19日
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  コメント
こういうのは悲しいですね。各地で見かけることですが。

当初は盛り上がってイケイケで設置したのでしょうが、メンテが永遠に必要だとは誰も思ってなかった…そんな気がします。

現在でもきれいな姿をキープしてるところは、やはり常に手を入れてるというか、管理する主体(=自治体など)にきちんと予算が計上されてるんだろうな、と。
ボランティアに頼っていては、こういうものの管理はまず無理ですし。

北海道は道北エリアの名寄駅近くでは、かつて除雪に大活躍した“キマロキ”編成が静態保存されてますが、これが素晴らしい状態でした。
積雪期にはシートで覆って公開もせず、常にメンテしてるようで…北海道でも廃線跡などにはかつての車両をモニュメント的に置いてたりしますが、当初はそう思って置いたものの…劣化は考えてなかったようで…かさぶただらけの悲しい姿で晒されてるという…おっしゃるように、子供は怖がって近づきませんよね。そのうちDQNによる落書きが始まるのでしょうが。

SLが地元に直接的に多く絡んでたか否か…そこもあるのかも。若松ならば早くに無煙化されてそうですし。
遠くなく、間接的な筑豊で石炭の生産が…それもあったかもしれませんが…そこに“愛のあるなし”を感じました。

長文失礼。新車両就任と対照的に、一時の感情に流される罪を思いました。
素晴らしいレポート、ありがとうございます。

中林20系 #- [ 編集 ]    2016年10月25日(火) 21:42
これは残念・・・

ほとんど保存の声が上がらないDLやELに比べ、SLは保存の機会が多いと思うのですが。

JR草津線の甲西駅前にも放置されたSLがありましたが、ここまではひどくなかったかと。

こんな骸を後世に晒すようであれば、軽々しく保存の声をあげるべきでは無かったと思います。
ふぐにさん。 #36k9amUg [ 編集 ]    2016年10月25日(火) 23:54
中林20系さん
> こういうのは悲しいですね。各地で見かけることですが。

このような物件は近年、だいぶ増えてきました。


> 当初は盛り上がってイケイケで設置したのでしょうが、メンテが永遠に必要だとは誰も思ってなかった…そんな気がします。
> 現在でもきれいな姿をキープしてるところは、やはり常に手を入れてるというか、管理する主体(=自治体など)にきちんと予算が計上されてるんだろうな、と。
> ボランティアに頼っていては、こういうものの管理はまず無理ですし。

高齢化で保存会が解散している例もありますよね。


> 北海道は道北エリアの名寄駅近くでは、かつて除雪に大活躍した“キマロキ”編成が静態保存されてますが、これが素晴らしい状態でした。
> 積雪期にはシートで覆って公開もせず、常にメンテしてるようで…北海道でも廃線跡などにはかつての車両をモニュメント的に置いてたりしますが、当初はそう思って置いたものの…劣化は考えてなかったようで…かさぶただらけの悲しい姿で晒されてるという…おっしゃるように、子供は怖がって近づきませんよね。そのうちDQNによる落書きが始まるのでしょうが。

まさかキマロキがああなっていようとは思っていませんでした。今回ご紹介した19633も2000年ごろまでは状態がまあまあ良かったんですよ。2000年から2010年までの10年間で急激に劣化してしまいました。


> SLが地元に直接的に多く絡んでたか否か…そこもあるのかも。若松ならば早くに無煙化されてそうですし。
> 遠くなく、間接的な筑豊で石炭の生産が…それもあったかもしれませんが…そこに“愛のあるなし”を感じました。

若松は比較的後年まで蒸機のメッカだったと聞いています。筑豊線の優等牽引機はおおかた若松所属でしたし、有名なC55-57なんかも若松にいました。それだけに保存の意義はあると思いますが、いかんせん若松は塩害をもろに受ける場所です。
wra #9MBBB9Tg [ 編集 ]    2016年10月26日(水) 20:50
ふぐにさん。さん
保存車両があのようにボロボロになってしまうのは、完全に行政側の計算ミスというものです。ただでさえ塩害で劣化しやすい海沿いに置いているというのに、加えて雨ざらし保存。これではあっという間に巨大な鉄粉と化してしまいます。

貴重な九州の若番96なだけに、ずっと気になっている物件なんです。
wra #9MBBB9Tg [ 編集 ]    2016年10月26日(水) 20:55
これは…
もう、朽ち果てるのを待つばかり、としか見えないですね。残念です。


長期的計画を練らなければ、宝の持ち腐れって言葉そのまま実現してしまう悪い見本ですね…。


レストアするにも費用の面もあるし、素人目から見ても保存て大変なんだな、と。
焼きそば #t50BOgd. [ 編集 ]    2016年10月26日(水) 21:48
焼きそばさん
> もう、朽ち果てるのを待つばかり、としか見えないですね。残念です。

もうかれこれ十数年近くの間、何の整備もされていないんですよ。おまけに海が近いので、塩害で鉄板が風化して鉄粉になっています。久しぶりに見てきましたが、以前よりもいっそうひどくなっていました。


> 長期的計画を練らなければ、宝の持ち腐れって言葉そのまま実現してしまう悪い見本ですね…。

今や機関車をこのように放置している自治体が多くなりました。2000年頃から手放して解体というケースが増えており、この流れはしばらく続きそうです。


> レストアするにも費用の面もあるし、素人目から見ても保存て大変なんだな、と。

ちゃんとした技術を持っていないと、修復してもすぐに悪くなったりすることが多いようですし、保存活動は非常に大変だと思います。幸い、福岡にはちゃんとした保存団体があるので、いくつかの機関車が救われています。
wra #9MBBB9Tg [ 編集 ]    2016年10月26日(水) 23:52
こんばんは。

こんだけ酷い保存状態のSLは
初めて見ました。
せめて、屋根くらいは付けられなかったのか、
とも思いますが…

長野の方でも、中央線沿線のいくつかの街には
SLを保存している所があるんですが、どこも
あんまり良い保存状態とはいえず…

保存を決めたのが、1970~80年代で
丁度、中央西線の電化が完成して、
日本の経済が上向いて来た時期なんで、
今より各自治体お金があって、
勢いで「お世話になったSLを残そう!!」と
保存したは良いけど、景気が悪くなって、
その後管理がきちんと出来なくなったの
かも知れません。


>保存を始めた当時の志はいったい、
>どこに行ってしまったのでしょう
>か。

整備や管理のノウハウもなくなってきますし、
今後、野ざらしで静態保存されているSLを
どうするかってのは、可及の問題ですよね。
KZ-1 #- [ 編集 ]    2016年10月27日(木) 23:42
KZ-1さん
KZ-1様、こんばんは。

> こんだけ酷い保存状態のSLは
> 初めて見ました。

これまでに解体された保存車両の例に鑑みると、ここまで酷くなったら5年は持たないと思います。近代遺産の保存活用に力を入れているはずの北九州市も、実はこのような状況にあるんです。ここまで来たら、生きるも死ぬも行政次第といったところでしょう。


> せめて、屋根くらいは付けられなかったのか、
> とも思いますが…

屋根がないと、車体の色々な隙間から水や潮風が入り込んで、部品が劣化していくんですよね。ボイラ下には立派な穴が空き、動輪周りには崩れ落ちた部品や錆びた鉄粉が散らかっていました。


> 長野の方でも、中央線沿線のいくつかの街には
> SLを保存している所があるんですが、どこも
> あんまり良い保存状態とはいえず…

先日、保存車両の解体に関する新聞記事を目にしました。今や全国規模で、保存車両の修復が問題視されているようですね。
勢いに任せて保存したツケが、今回ってきているのだと思います。


> 整備や管理のノウハウもなくなってきますし、
> 今後、野ざらしで静態保存されているSLを
> どうするかってのは、可及の問題ですよね。

綺麗に整備してコンプレッサで動かしたりする例も見られますが、あくまでもごく少数のケースに過ぎません。これからの時代、保存車両にとって受難の時となりそうです。保存客車も美瑛のスロ52改造車のように、貴重な車両が沢山あるんですよね。客車も気になる所です。
wra #9MBBB9Tg [ 編集 ]    2016年10月28日(金) 00:38
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