一福岡県民が見た平成28年熊本地震とその影響について
私は福岡県内に居住していますが、こちらでも強い余震がいまだに続いています。熊本県内外にかかわらず、地震に対して強い警戒を持ってもらうために本記事を設置しました。
最初の揺れは14日21時過ぎにおこりました。当時私は自宅にいまして、2階でブログ記事を執筆しているところでした。突然、小刻みに揺れたかと思うと、揺れは徐々に大きくなり、激しい揺れは10秒ほど続いて収まりました。
ここ10年で経験しない揺れに驚き、家族のいる1階に降りてみたところ、熊本で震度7の揺れだったことが分かりました。家族に聞くと、揺れる前に携帯電話の緊急地震速報が流れたとのことで、今回は同機能がしっかり動いていたことを確認できました。
福岡県でも2005年、福岡県西方沖地震が起こり、玄界島を中心に多数の被害をこうむりました。福岡であれだけの揺れがあったのは、2005年以来といって良いです。当時の恐怖を思い出し、不安を抱きながら夜を過ごすことになりました。
一夜明けた15日、被害状況が次々に明らかになってきました。熊本城の石垣は一部が崩れ落ち、震源地に近い益城町では建物の全壊・火災により、多くの町民が避難を強いられています。熊本駅付近では、回送中の800系新幹線が脱線し、地震に強いと一般的にいわれている新幹線でさえ、九州新幹線の全線で運休しています。非常に激しい地震だったことが、テレビ画面を通じてすぐに伝わってきました。
鉄道だけではありません。高速道路も大変な被害を受けています。福岡と鹿児島を結ぶ大動脈・九州道では、震源地付近の道路が陥没した影響で、高速道路を使った輸送活動ができない状況です。
(読売新聞「負傷者1千人超に、九州新幹線復旧のめど立たず」)
余震が収まる気配もありません。福岡県北部では、震度1~2程度の揺れが頻発し、福岡県西方沖地震で感じたような、地面が常に揺れているような感覚を覚えるようになりました。熊本県内では、さらに激しい余震が続いています。
福岡県北部の交通・経済は私の見る限りだと、通常時に近い状態です。しかし、鹿児島本線は荒尾以南で運転を取りやめているなど、熊本県に入ると、交通網が所々で途切れているようです。新幹線も在来線も動いていないため、福岡~鹿児島(JAL・JAC)、大阪~熊本(ANA)といった航路で、新幹線をカバーするための臨時航空便が設定されました。
(JNN「九州新幹線の全線復旧の見通し立たず、飛行機は臨時便を運航」)
夜に入ると、福岡県内での余震は落ち着いてきました。大きな揺れは息を潜め、静かな夜になろうかとしていた矢先、16日未明に再度、大きな揺れが九州を襲います。
周囲がすっかり寝静まっていた16日未明、またしても大きな揺れに襲われました。あまりに激しい揺れに、驚いてテレビを付けてみると、最初に九州を襲った揺れとほぼ同じ規模の地震が起きていました。14日にはなかった津波注意報も発令され、1メートル近くの津波が到達したといわれています。
震度2~3程度の余震が続き、またしても不安で眠れないまま夜が更けました。未明の地震では、さらに被害が拡大し、とくに阿蘇地方では交通網が寸断寸前に追い込まれるほどの被害も発生しました。
熊本から阿蘇地方には、立野駅周辺に穿たれた外輪山の小さな切れ目を抜けて入ります。険しい地形のため、阿蘇に入るルートは非常に限られ、ひとたび災害に見舞われると交通網が寸断されてしまいます。16日未明の地震では、ついに恐れていたことが現実化しました。
山の大崩落によって土砂が流出し、国道57号線と豊肥本線だけでなく、南阿蘇にはいる数少ないルートだった「阿蘇大橋」が跡形もなく消えてしまいました。南阿蘇に入るもう一つのルートだった俵山トンネルも崩落を起こしており、阿蘇谷は南北ともに孤立に近い状態になっています。また、大津町から北西部に遠回りして阿蘇に続く、県道339号「ミルクロード」も通行止めになっているという情報も入っています。
(産経新聞「熊本地震 阿蘇村の温泉旅館で50人孤立、FBに投稿「お客様だけでも避難させてほしい」」)

▲熊本地震で崩落した阿蘇神社楼門(2012年撮影)
阿蘇神社では楼門が崩落し、熊本城では石垣の崩落が進んだことにより、倒壊寸前になった櫓(飯田丸五階櫓)もあるなど、被害は古い建造物にも及んでいます。
(JNN「熊本城で石垣崩落、櫓が崩れ落ちそうに」)
気象庁は未明の地震を受け、14日の地震を「前震」と、16日未明の地震を「本震」と発表しました。
(産経新聞「熊本地震 16日未明のM7・3が「本震」、28時間前は「前震」だった 気象庁「予測困難」と釈明」)
交通網は一層混乱が進み、鹿児島本線は16日7時時点において、二日市~八代間が運休、さらに日豊本線、久大本線、西鉄天神大牟田線も運休するなど、列車運休区間は拡大しています。
(レスキューナウニュース「〔地震〕鉄道:始発から運転見合わせなど九州で影響路線多数(16日7時現在)」)
(レスキューナウニュース「〔地震〕鉄道:九州新幹線など各線で影響続く(16日12時現在)」)
16日13時現在においても、福岡では頻繁に震度1~2程度の余震が続いています。
本記事は4月24日までトップページに表示する予定です。熊本地震についてさらに詳しい情報が入り次第、順次加筆していきます。
今後も強い余震が起こる可能性があります。熊本県内外にかかわらず、九州在住の方はとくに、突然の揺れと建物からの落下物等に引き続き警戒してください。地震でひびの入った橋・構造物がありましたら、近づかないようにしてください。とくにブロック塀は地震で崩れやすくなっており、福岡県西方沖地震でも、ブロック塀の倒壊で死亡者が出ています。
通常の記事は25日から掲載再開予定です。
更新:2016年4月16日


鹿児島本線の二日市~荒尾駅間で運転が再開されています。
ただし、再開区間でも一部列車に運休が発生しており、17時時点では、上り快速列車が30分以上も東郷駅に発着していない状況です。今後の状況次第では再び、運休区間が拡大する可能性もあるので、鉄道を利用する際は駅掲示板に目を通すようにしてください。
どうやら、震源が益城町周辺から阿蘇・大分方面にずれているようです。熊本県東部・大分県にお住まいの方は、引き続き強い揺れに警戒してください。
(西日本新聞「専門家「これ以上の本震が今後あるかもしれない」 地震連鎖可能性否定出来ない」)
更新:2016年4月16日
福岡で強い揺れを感じることはなくなりました。その一方で、震源地に近い熊本・大分両県では頻繁に地震が発生しています。追い打ちをかけるように、16日夜から未明にかけて激しい風を伴う雨が降り、被災地を取り巻く環境は悪化しました。
地震が収まる気配は一向になく、今回観測されたM3.5以上の地震回数は、とうに160回を超えていると発表されました。これは新潟県中越地震のそれを上回る回数です。
(読売新聞「M3・5以上、165回…活動収まる気配なし」)
史跡の損壊も進行しました。地震発生直後から石垣等の崩落が見られていた、熊本城の損傷は日を追うごとに激しくなり、ついに完全復旧まで数十年を費やせなばならない状況にまでなっています。水前寺公園にある、19世紀後半に建造された、「ジェーンズ邸」(県指定重要文化財)も全壊し、周囲は瓦礫の山と化しました。
今回、耐震対策が十分でない古い建築や、耐震工事を受けていない鉄筋コンクリート建造物に大きな被害が見られています。宇土市役所・八代市役所(いずれも本庁舎)は半壊状態になり、倒壊の恐れがあるとして本来の機能を失っている状況です。
(西日本新聞「ジェーンズ邸全壊 熊本県内最古の西洋建築 県重要文化財」)
(同上「<熊本地震>宇土市庁舎倒壊の恐れ 壁にひび、窓枠などが変形」)
(朝日新聞「八代市役所本庁舎を封鎖 倒壊の恐れ、2支所などに機能」)
鹿児島本線の運行状況は前日と変わらず、荒尾以南の運転は行われていません。
更新:2016年4月17日
ながらく熊本県区間の運転が休止されていた鹿児島本線ですが、ついに荒尾~熊本間の運転が再開されました。ところが、15時過ぎになって再度、荒尾~熊本間は不通になりました。熊本駅の柱に亀裂があり、駅構内への乗客立ち入りが制限されたためです。その後安全が確認され、再度運転再開となっています。
800系が脱線した九州新幹線でも、ようやく復旧へ向けて作業が開始されました。18日は脱線した車両を線路に戻すため、油圧ジャッキを使用した作業が行われましたが、以前として再開のめどはたっていません。しばらくの間、博多~熊本を結ぶ速達列車は、在来線の臨時列車が担う予定です。
熊本空港の復旧作業も行われ、19日には営業再開になる予定です。ただし、保安検査場など諸設備の損傷があった関係で、到着便のみの受け入れとなります。熊本空港から搭乗ができるようになるには、あと数日かかるかもしれません。
(西日本新聞「<交通インフラ復旧の動き>JR熊本-福岡再開 熊本空港は19日運航再開」)
地震発生から時間が経つにつれ、被災地では物資の不足が目立っています。これに対処するため、救援物資の受け入れ基地を設置する動きがあります。福岡市では旧大名小学校に受け入れ施設が設置され、10時から20時まで物資の提供を受け付けているとのことです。
(みんなの経済新聞ネットワーク「熊本へ広がる支援 福岡市、旧大名小で物資受け入れ開始 /福岡」)
16日以降、福岡で強い揺れを感じなくなっていました。そんな中再び、20時台に震度4(熊本は震度5台)の強い揺れがありました。引き続き強い揺れに警戒してください。
更新:4月18日
熊本・大分両県では、相変わらず余震が続いています。
鉄道の運行状況に目を向けると、19日から新たに、豊肥本線熊本~肥後大津駅間で運転が再開されています。しかし、17時台に観測された余震の影響により、一部路線で運転見合わせとなりました。
20日からは新たに、九州新幹線の新水俣~鹿児島中央間で運転再開になる予定です。ただし、その他の区間では復旧のめどが立っておらず、熊本~八代~水俣間の鉄道輸送が空白状態になっています。
現在、九州自動車道は植木~八代IC間で通行止めになっています。植木~益城熊本空港IC間で、緊急車両に限って通行再開になりましたが、依然として不通区間の再開とは程遠い状況が続いています。
19日から熊本空港の営業が再開されました。到着便だけでなく出発便の発着も再開され、交通網が麻痺している熊本地方に嬉しいニュースとなりました。また、西鉄バスによるバス路線のうち、運休されていた福岡~由布院・別府・大分を結ぶ路線の運転も開されています。
(レスキューナウニュース「〔熊本地震〕鉄道:余震で見合わせ路線増える(19日19時現在)」)
(同上「〔熊本地震〕鉄道:明日20日から九州新幹線の一部と市電全線で再開(19日21時現在)」)
(読売新聞「熊本空港再開、出発便も運航へ…交通網回復兆し」)
(同上「航空路線や高速バスの一部再開…各地の交通網」)
更新:4月19日


▲4月20日の運行計画―博多駅にて
熊本地震の発生から5日を経て博多駅は、すでに日常に戻っているかに見えました。しかし、電光掲示板に掲載された運行計画表に、事の深刻さが深く刻まれていました。
20日現在、博多駅から熊本方面へ向かう場合は、快速列車で荒尾駅まで向かい、そこから普通列車に乗り換えて熊本駅まで乗車するようになっています。速達列車は運行されておらず、列車だけで移動すると非常に時間がかかります。また、在来線でも大幅なダイヤの乱れが生じました。普通・快速列車に10分以上の遅れが出たほか、余震の影響で特急「ソニック」に運休(ソニック41号)や車両変更(ソニック43号)が発生しました。
熊本・大分両県では依然として余震が続き、被災地が混乱状態にあることには変わりありません。その一方で、インフラの復旧が進められ、19日に鹿児島本線・九州新幹線の不通区間(いずれも一部)が、20日には肥薩おれんじ鉄道(全区間)が再開されました。
(西日本新聞「九州新幹線、6日ぶり一部再開 停電は全面解消の見込み」)
しかし、熊本~八代間のインフラ寸断は変わらず、そのため福岡と鹿児島を結ぶ輸送手段が大幅に限られています。毎日新聞の記事では、早くても21日に鹿児島本線熊本~八代駅間を再開すると報じられていますが、JR九州の運行計画上では、21日も同区間の運休を続ける方針です。運行状況は突然変わる場合があるため、鉄道利用の際は運行情報をご確認ください。
(毎日新聞「<熊本地震>鹿児島線、21日にも全線運行再開 JR九州」)
(JR九州「運行情報【4月20日 18時30分現在】」)
高速バス業界でも新たな動きが見られています。西鉄バスが運行する福岡~熊本間の路線が、21日から本数を減らして再開されます。大雨を見越して運行再開は延期されましたが、福岡~黒川温泉間も再開される見通しです。
(レスキューナウニュース「〔熊本地震〕高速バス:福岡~熊本便 明日21日から運行再開(20日21時30分現在)」)
引き続き、大雨による二次災害に気を付けてください。気象庁は21日明方から、九州地方で激しい雨になると発表しました。熊本では毎時最大50ミリ、大分では同40ミリの降雨があると予想されています。
(時事通信「熊本と大分、土砂災害警戒=21日明け方から大雨強風―気象庁」)
更新:4月20日
九州北部では、21日未明より激しい雨が降り続けています。被災地も激しい雨に見舞われ、熊本・大分両県では16万人以上に避難勧告・指示が出されています。地震により脆くなった斜面の崩落に十分警戒してください。
(読売新聞「強い雨で捜索中断、16万人に避難勧告・指示」)
一方、JR九州では鹿児島本線熊本~八代駅間の運転が再開されることになりました。同区間は13時ごろから運転再開が予定されています。これにより、鹿児島本線・肥薩おれんじ鉄道(八代~新水俣)・九州新幹線(新水俣~鹿児島中央)を乗り継ぐことで、福岡から熊本経由で鹿児島まで移動できます。
(JR九州「運行情報【4月21日 11時30分現在】」)
九州新幹線について、新たな動きがありました。落下した防音壁の復旧工事が22日に完了する見通しとなり、23日から博多~熊本間で試運転を行う予定です。安全を確認でき次第、営業列車の運転を再開させる方針とのことです。車両が不足していることから、当面は本数を減らしたうえで、新玉名~熊本間では徐行運転を行う見通しです。
ただし、熊本駅付近で脱線した800系の復線作業は完了しておらず、熊本~新水俣間の再開は未定です。
(毎日新聞「<熊本地震>九州新幹線の博多-熊本を再開へ 23日に試験」)
更新:4月21日
JR九州は22日、翌4月23日の運転計画を発表しました。
1週間にわたり、運転見合わせが続いていた博多~熊本駅間の復旧工事が完了しました。下り「つばめ323号」(博多11時51分発)、上り11時53分発列車(番号不明)から運転を再開する予定です。車両数が不足していることから、本数を減らして運転します。
熊本~新水俣駅間では運転見合わせが続き、再開の見通しは立っていません。脱線した800系の復線作業は進んでいるため、作業が順調に進めば、近いうちに再開の見通しが示されるものと思われます。
(読売新聞「博多―熊本間、23日正午頃再開へ…九州新幹線」)
(レスポンス「九州新幹線、4月23日から博多~熊本間の運転再開へ」
在来線でも復旧作業が順調に進んでいます。23日午後からは、三角線の全区間が再開される予定です。また、豊肥本線豊後竹田~宮地駅間ではバスによる代行輸送が実施される予定です。
(JR九州「運行情報【4月22日 19時40分現在】」)
仮設住宅設置の計画も進められています。熊本県は西原村内に仮設住宅を50戸設置すると発表しました。今回の計画で示された50戸に関しては、6月完成を目指しています。
熊本県中央部を中心に、おびただしい数の住宅が倒壊・半壊していることから今後、県内各地に仮設住宅を多数設置する必要があります。
(読売新聞「建物危険判定、600人に政府増強へ…熊本地震」)
更新:4月22日
23日からは、九州新幹線博多~熊本駅間の運転が再開されました。
また、同日のうちに九州新幹線の復旧計画も大きく進展しました。4月28日をめどに、全線での復旧を完了させると発表されました。損壊箇所が多いため、補修工事を進めながら一部区間で徐行運転を行い、全列車が「つばめ」として運転される予定です。通常ダイヤで運行できないため、博多以東への乗り入れは検討段階にとどまっています。
(西日本新聞「九州新幹線「GW前、28日には全線再開する方針」JR九州」)
23日に運転を再開した三角線に続いて、肥薩線も24日に八代~吉松駅間で運転を再開する見込みです。これにより、肥薩線も全線復旧することになります。
(読売新聞「JR肥薩線、24日全線開通…三角線すでに再開」)
- 関連記事
-
-
青井阿蘇神社(熊本県人吉市)―400年の歴史を誇る社殿は必見!
-
一福岡県民が見た平成28年熊本地震とその影響について
-
沈堕の滝(大分県豊後大野市)―谷底に「発電所跡」のこる
-