樺太から宗谷海峡を隔てて向かい合う北海道には、ロシア人によって樺太から追放された住民が多く移り住み、樺太ゆかりの石碑も多く残されています。今回はその一つ、「樺太庁豊原中学校記念碑」を見るため、札幌市中央区の旭山記念公園にやってきました。

記念碑は公園の片隅、ちょうどJRバス界川2丁目停留所のすぐ横に鎮座しています。目立たない場所にあるため、見落としてしまわないようご注意ください。

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記念碑は「上田校長頌徳句碑」と「建碑之記」の二つでワンセットになっています。

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まず「建碑之記」から見てみましょう。この碑文には、頌徳句碑が建立されるまでのいきさつが刻まれています。

建碑之記

 我等同窓生、嘗て昭和十八年上田校長の頌徳句碑の建立を図りしも 戦時下の情勢により中断の止むなきに至る。然るに三十有余年を経て 右碑が石巻市亀井石材店に現存せるを知り 母校思慕の念に堪えず 茲に我等が熱意を挙りて建立の意志を達成せるものなり。母校は大正十四年開校、昭和二十二年僅か二十有三年の歴史を閉ず。その間細川、上田、瓜田の三代校長を中心に師弟一如、教学甚だ興り、その盛名全国を馳す。

 母校既になし。然れども母校は豊中教学の精神と共に 我等が胸奥に厳然として存続す。

 茲に右碑建立の由来を記し 併せて母校の歴史と栄光とを永久に伝えんとするものなり。

昭和五十四年八月
樺太庁豊原中学校同窓会

建立時期は1979年と、樺太返還運動がしりすぼみになった時期にあたります。以前ご紹介した小樽市の樺太記念碑に関してもそうですが、時期が時期であるのと、建立の主体が樺太出身者であることから、忌々しい「サハリン」の文字は一切見当たりません。

意図的な抹殺・忘却の運命をたどりだした日本領樺太の歴史、そのなかでも教育史を後世に伝えたいという思いが、建碑之記から伝わってきました。

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石碑の台座部分には、旧制豊原中学校の校章が埋め込まれています。ソ連(ロシア)に侵略されていなければ、間違いなく新制豊原高校になっていたでしょう。あわよくば樺太一の進学校となり、多くの学生が国公立大学に進んでいたかもしれません。

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続いて、建碑之記の右側にある、上田校長頌徳句碑を見ていきましょう。表側には歌が一句「薫風や 皇城南 一千里」と刻まれています。

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続いて裏面を見ていきましょう。裏面には豊原中の二代目校長、上田光㬢の頌徳に関する文章が刻まれています。下の文章は碑文をもとに、片仮名を平仮名に、歴史的仮名遣いを現代仮名遣いに改めたうえで、適宜半角スペースを空けて読みやすくしたものです。

 
純煌 上田光義先生 昭和二年 母校第二代学校長として着任 同十四年 樺太師範学校長に転せらる。追十有三年 夙夜大豊中建設のため尽瘁せらる 先生常に士魂の陶冶を教学の中核とせられ 熱涙以て至誠尽忠の大義を説 かつ教を先生に受くる者 誰か其の高風を讃仰せさらん 時方に大東亜聖戦下 士魂の発揚 今日より急なるはなし 茲に吾等門生一同 先生欣慕の情に堪えず 因って頌徳の句碑を建立し 報恩の微衷を表す。
 
 昭和十八年 八月
   樺太庁豊原中学校同窓会

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碑文の片隅には「宮城県稲井 亀井久六謹刻」と刻まれています。この稲井とは石巻市東部の地名で、付近にはJR石巻線の陸前稲井駅があります。

この石碑は豊原中学校に建立される予定でしたが、戦局の悪化を受けて建立されることはなく、そのまま樺太はロシア人に侵略され、豊原中学校は閉校させられました。その後も石碑は亀井石材店に保管され続け、それを知った豊原中OBによって、旭山記念公園に安住の地を得ました。

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石碑の横には、地蔵のような石像が複数体置かれていました。

さて、8月9日は北方領土(南樺太・千島列島)へのソ連侵攻が開始された日です。一連の侵略・交戦によって、多くの日本人がロシア人に暴行・虐殺され、残された住民も長期間の抑留を余儀なくされました。しまいには領土自体も奪われ、一帯はロシアの要塞と化しています。

北方領土問題は決して四島(国後島・択捉島・色丹島・歯舞群島)だけの問題ではなく、南樺太・北千島にもかかわる問題であることを、日本人は忘れてはいけません。そして一連の問題がすべて解決されてこそ、真の日露友好が存在することを、日本人は肝に銘じるべきです。

撮影日:2019年7月18日
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