もう残された時間がない…李登輝元総統の逝去に思う

コロナ禍の中、偉大な方がその波乱万丈に満ちた生涯を閉じました。

台湾民主化の父として、日本語世代の代表者として、農学者として、李登輝元総統は日台に大きな功績を残しました。晩年まで精力的に活動されており、100歳間近とは思えないほどの話しぶり、そして気骨があったと思います。

李登輝政権には功績もあれば問題点もありますが、確かに言えることは、台湾人による民主国家の礎を築いたことです。組織(国民党)に身は染まっても頭は染まらず、時勢を見極めて時代を変える。並大抵の人間にはできないことです。

長くがんを患い、繰り返し手術を受けておられました。最近の動静が見えないことで、僕は静かに衰え死んでいった祖父を思い出していました。それでも祖父より10歳以上も長く生き、大往生というしかありません。


先生がいらっしゃったからこそ、僕は自虐史観から覚め、そして台湾という友邦の存在を身に染みて学びました。実際にお会いすることは叶いませんでしたが、武士道に基づく理念は今後も見習いたいものです。

無念だったでしょう。台湾が国際的に一国家として公平な扱いを受け、日台国交樹立が実現するその瞬間を見届けることは、ついに叶いませんでした。ぜひ見てもらいたかったです。


今、こうしてもどかしさを感じる自分がいます。今年に入ってから、日本語世代の著名人が次々に他界し、李登輝氏も旅立たれました。僕がこれまで会ってきた方も、すでに数名が鬼籍入りしているでしょう。

昨年、僕は日本語世代の記憶を記すチャンスは5年しかないと言いました。しかし、その刻限はさらに縮まったような気がします。もう時間がありません。こうして台湾に行けないからこそ、一層焦りを感じています。


現在進行形で、日本は韓国・北朝鮮・中国・ロシアという脅威にさらされ、台湾も中国という脅威を抱えています。これまでお会いしてきた方は口々に、台湾が一民主国家として歩み続ける未来を望んでいました。どれも、白色恐怖という地獄を味わったからこその、説得力ある言葉でした。

日本語世代の夢はまさに、日台をつなぐ希望だと思います。これを無下に切っては、東アジアの民主主義はたちまち崩壊するでしょう。

親中派の暗躍、尖閣諸島の領有権など、課題は山のようにあります。それらを乗り越え、互いに友邦として力を合わせ、東アジアの安定化につとめるべきではないでしょうか。李登輝氏の逝去で身に染みてそう感じています。

2020年7月30日
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