【旅行記】サンライズ出雲&18きっぷの旅2021春 1日目―意外と眠れるサンライズソロ
この4文字が世を埋め尽くしてはや1年。マスコミや政治家は「死のウイルス到来」を叫び、ありとあらゆるイベントは中止に追い込まれ、雑踏は瞬く間にマスク一色になりました。
根本的なところは、1年経っても変わっていません。2021年1月に再度、緊急事態宣言がなされたところで、旅行・観光産業は自粛ムードと同調圧力にとどめを刺されようとしています。
この1年間、僕は有意義な時間を得ました。夏の長旅はいうまでもなく、イラストデザインの技術を得たことで、自分のコンテンツを見直すことができました。地球規模の鎖国状態さえなければ、インド旅行に出て、また違った人生を歩むことになったでしょう。
さあ問題はこれから。いつまでも「ステイホーム」「おうち時間」を繰り返しては、世の中ますます腐っていくばかりです。そういう世の中にガツンとパンチを与える気分で、春の長旅を計画しました。
行程をどうするか
今春もおなじみ青春18きっぷが販売されました。これを活用しつつ、JR線の完乗を目指すのが基本です。
まず最初に木次線の完乗を考えました。中国地方山間部の路線は、これまで僕の旅とは無縁の存在でした。完乗を意識しだしたのは、三江線の廃止が契機です。とくに1日3往復しかない区間を持つ、芸備線と木次線には早期に手を付けておかねばなりません。まずは木次線から乗ることにしました。
ついで、長大で本数の少ない紀勢本線の通過を考えました。ところが、それを考えて行程を組むと、今度は宿の問題にぶち当たりました。お手頃な価格帯が見つからないのです。それでいて、最終手段のネカフェもないのですから、行程表を書きつつ頭を抱えるわけですよ。
ここで思いつきました。どうせ高いホテルしかないのなら、サンライズ出雲に乗ってはどうだろうか、と。今や国内唯一の存在となった、大衆向け寝台特急で一泊過ごそうというプランです。出雲市から東京まで2万と高いですが、よく考えると、285系は登場から20年以上が経っていて、油断していたらいつの間にか消えていた、なんてこともあり得ます。
腹をくくりました。木次線で島根に出たら、サンライズ出雲で東京に向かいます。しかも、以前から乗りたかったB個室「ソロ」を利用して!
東京に着いたら、2日目は東京散策に、3日目は首都圏西側のJR乗り潰しに充てます。4日目はいったん東京を出て、身延線・中央本線を乗り潰してから、長野で一泊。5日目は飯山線・吾妻線に立ち寄って栃木に向かい、6日目は日光・鬼怒川温泉から動きません。以上6日目まで事前に予定を組みました。
はたして、今回の旅ではどんな発見が待っているのでしょうか。
とんだ勘違いで1000円損する
本音をいうと、早起きなんてしたくありません。木次線のわずかな本数が、眠りを求める僕をたたき起こしました。まだ夜も明けぬ4時半のことです。

▲赤間駅にて
普段は東郷駅を利用する身ですが、東に行くときは赤間駅を常用しています。5時26分発の普通列車で向かうは小倉です。下関行きに乗り換えたところで、あっさりと九州を出てしまいました。
これから岩国行きで一気に進み、順調に乗り換えを重ねると、備後落合で宍道行きに接続する…はずでした。じつはここで大きなミスをしています。岩国行きだと思っていたのは、なんと徳山行きでした。うっかり間違えて、1時間前の列車をひいていました。
ちなみに5時26分発の始発で赤間を出発後、もし普通列車だけで進んだ場合、備後落合で乗車予定の宍道行きに間に合いません。もし明るい時間帯に木次線を完乗したければ、新幹線でワープする他ないのです。

▲新下関駅にて
ワープ区間は通常、徳山~広島を選ぶのが主流ですが、たまには徳山~広島を在来線移動したいものです。この時点で、徳山行きは新下関ホームに入ろうとしていました。ならばと新下関~新山口で調べてみると、どうもワープできそうだと判断して、思いつきのごとく列車を降りました。
しかしよく考えたら、新下関~新山口で簡単にワープできるはずがありません。何かおかしいと思い、再度調べ直すと、またしても時間を見誤っていました。何ともばからしいですが、急な思いつきほど怖いことはありません。
結局、新下関から徳山までの切符を買うはめになりました。徳山~広島間の運賃よりも若干高く、結果損した形です。

▲新下関駅にて
新幹線ホームに上がると、ほどなくして新大阪行きこだまが到着。この時間帯の新大阪行きこだまといえば…そうです、「キティさんの新幹線」です。久しぶりにハートフルな一時を過ごしました。結果オーライ!
なんとか1時間分のワープに成功した僕は、下関を5時台に出た岩国行きに乗りました。これでなんとか、当初の行程に間に合った形です。115系のクロスシートに腰掛け、山陽本線の旅を再開しました。
無理して起床したせいか、眠気が襲ってきます。意識が遠退いているうちに、列車はもう南岩国に停車していました。あと1駅でもう乗り換え駅です。普段とは違う旅になる…そんな気がしてきました。
三次でお好み焼きを食べる
広島駅から先は未知の領域です。これから芸備線・木次線を経由して、中国山地を横断する長距離移動が待っています。
芸備線ホームに停車していたのはキハ40系2両の快速「みよしライナー」。かつて芸備線を走っていた急行「みよし」のなれの果てといえる存在です。古めかしいボックスシートに身を沈め、広島駅を出発しました。

▲芸備線で広島郊外を進む
しばらくの間、広島市郊外の住宅地を進んでいきます。住宅地から田園風景に変わりだした頃、何もない場所に停車しました。3分経っても動きません。運転席から無線の声が飛び交います。どうやら、この先にある場内信号が作動しない模様。

▲三次駅にて
列車は数分の遅れを出して、ようやく動き出しました。いくつもの停留所を通過して、普通よりも数十分早い所要時間で、三次駅に到着。1時間の待ち時間をへて、備後落合行きに乗り換えます。
ちょうどいいや!この待ち時間をランチタイムに充てようと思います。コンビニを探して駅を出ると、ほどなくしてショッピングセンターを発見。ここで弁当を買うため、さっそく入店しました。

決して広くないとはいえ、ちゃんとフードコートまであります。もちろん、広島名物・お好み焼きの店もありますよ。ここで予定を変えて、お好み焼きのランチをいただくことに。

食事を終えて外に出ると、備後落合行きの出発時間まで30分も残っていました。暇つぶしにと、三江線の廃線跡を少し見てから、ドラッグストアで飲み物を買っておきます。駅の自販機は高いですから、飲み物は極力スーパーや薬局で買うようにしています。
急行なき芸備線の寂しさ
これから木次線に入るため、備後落合に向かいます。ホームに停車していたのは、キハ120形の単行でした。小さな車両ですが、それでも十分に乗れるほどの乗客しかいません。

▲三次駅にて
芸備線は広島から離れるにつれて、本数も利用者も減っていくのが特徴です。とくに三次から先は、バスの方が利便性に優れているという、かつての札沼線末端部を思わせる状況だと聞いています。
塩町で福塩線が離れると、いよいよ寂れ具合がひどくなってきました。駅や線路だけ、時代に取り残されたような雰囲気です。
列車は三次以東で最大の街・庄原市に入りました。市を名乗るだけあって、備後庄原駅には立派な駅舎と2面3線のホームがあります。利用者をバスに奪われているため、かつての急行停車駅もその規模を持て余し気味です。

▲備後庄原駅にて
ふと備後庄原駅のホームを見ると、広島カープの選手をかたどった人形がありました。なんでも、マツダスタジアムに展示されていたものだそうで、OB前田智徳氏の完成度が高すぎて、思わず吹き出しそうになりました。

▲備後西城駅にて
備後西城を過ぎると、列車はいよいよ山奥深くに入ります。人家はまばらになり、目に飛び込んでくるのは緑一色。そんな山奥で突如、レールがいくつも分かれて、そのまま終点・備後落合に到着しました。まさに秘境のジャンクションです。
ロングシートで木次線を下る
見渡す限りの山、山、山です。ここ20年で備後落合を取り巻く環境は変化しました。急行ちどりは消え、発着本数も大きく減っています。三次方面はともかく、新見・宍道方面に向かう列車は、いずれも1日3本しかありません。

▲備後落合駅にて
そのおかげで、行程を組むのにだいぶ苦労しました。列車が到着するまでの間、駅を少しだけ探検します。すでに無人化されて久しい駅舎は、地元住民によって大切に管理されていました。
やがて、新見・木次方面からの列車も到着して、備後落合駅に3色のキハ120形(広島・木次・津山)が並びました。これから宍道行きの列車に乗車します。

▲備後落合駅にて
乗り込んだ列車はオールロングシートでした。最近のJR西日本では、ローカル線のロングシート化が進行しています。旅終盤に乗車した紀勢本線も、やはりロングシートが幅を利かせていました。

これから木次線の中で、最も本数の少ない区間を走り抜けます。その中にはビュースポットや3段式スイッチバックもあって、とにかく見どころ満載な区間です。線路際を見ると、雪がまだ残っていました。

▲赤い三井野大橋

▲出雲坂根駅の3段式スイッチバックを進む

▲出雲坂根駅にて

▲出雲横田駅にて
秘境区間は出雲横田で終わり、進むにつれて人家が増えてきました。空が暗くなってきたころ、終点宍道に到着。

▲木次駅にて

▲宍道駅にて
これからサンライズ出雲に乗るべく、出雲市に向かいます。あいにく宍道での接続が悪く、ここで30分以上待つ羽目になりました。3月中旬とはいえ、さすがに日本海沿岸は肌寒く、常に動いてなければ震えが来ます。
出雲市行きを待つ間に、スーパーまつかぜ、「長くてキツイ」岡山行き288Mがやってきて、去っていきました。この間、出雲市に向かう列車は来ません。所定では特急やくもが来る時間帯ですが、過剰自粛のせいで運休になりました。
意外と快眠できる285系「サンライズソロ」
日没を過ぎたころ、ようやく出雲市行きが到着。キハ126のボックスシートに落ち着き、ようやくサンライズ出雲が待つ出雲市駅に降り立ちました。
あと13分後には出雲市を出発します。それまでの間に、駅コンビニで夕食と翌朝の食事を確保します。入線が出発5分前だそうですから、それまでに済ませたいところ。こういう時に限って、レジが混雑していがちですが、今回ばかりはそれもなく、余裕をもってホームに戻りました。
それから3分後、東京行きの285系サンライズ出雲がホームに入ってきました。今回はB個室ソロを予約しています。早速車内に入ると、中央部に狭い通路が通っていました。人一人が通れる幅しかありません。バックパックを背負っていたら、向きを変えるのも難しそうです。

自分の部屋を見つけました。今回は下段を確保しています。窓からの目線は低すぎず、一般的な列車とほぼ同じレベルです。個室内はほぼベッドスペースに充てられ、靴や荷物を置ける空間はほとんどありません。そんな下段とは対照的に、上段には荷物を置ける空間が用意されています。サンライズ通の間では、下段よりも上段の方が好まれやすいとか云々。
車内設備を確認しているうちに、列車は出雲市駅を定刻通り出発しました。これから山陰本線・伯備線を経由して、一路岡山に向かいます。それまでの数時間、車内探検をしながら過ごすことに。
今どきの豪華寝台列車が「走るリゾートホテル」としたら、この285系サンライズはさしずめ「走るビジネスホテル」というべきでしょう。洗練されていて、かつ庶民的な雰囲気を感じます。

ラウンジで夕食を終え、これからシャワールームに入ります。決して安いとは言えませんが、列車内でのシャワーなんてそう体験できません。シャワーカードもいい記念品になるでしょう。体を洗うには十分な時間と設備が用意されていました。
列車は伯備線をひた走り、布原駅で交換のため停車しました。これから出雲市行きの特急やくもとすれ違います。ところが、5分経っても列車は来ません。どうも様子がおかしい。
車掌の説明によると、動物がやくもに衝突したとのこと。おそらく鹿でしょう。山間部らしいなと思いつつ、横になって時間がたつのを待ち続けました。

▲岡山駅にて
ようやく布原駅を出発した時点で、サンライズ出雲は30分の遅れを出していました。岡山では間違いなく、サンライズ瀬戸が待ちぼうけを食らっているでしょう。あれこれ考えているうちに、眠気が襲ってきました。岡山での連結作業も見ることなく、半分睡眠状態で、窓の外をスナップするのが精一杯です。
眠気が勝っていますが、それでも今どこを走っているのか気になってしょうがない。列車が停車するたびに、窓の外をのぞいては、現在地を確認しながら過ごしました。
~つづく~
撮影日:2021年3月14日
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