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雨森天神社(宗像市緑町)―住宅地に呑み込まれた鎮守

今回は宗像市東部、緑町に鎮座する雨森天神社をめぐります。

鎮座地の緑町はいわゆる「新興住宅地」で、丘陵地帯をニュータウンとして造成したものです。住居表示上での地名は緑町ですが、かつては大字徳重に含まれていました。伊東尾四郎氏の『宗像郡誌』にも記載されているあたり、どうやら古くから当地に鎮座しているようです。

『宗像郡誌』における記載は以下の通り。

雨森天神社

赤間村大字徳重字兎渡浦にあり。

神社帳〕
一、祭神 大已貴神 少彦名神
一、由緒 不詳。例祭八月廿三日
一、境内神社五社

  • 貴船神社 祭神 高龗神 由緒不詳
  • 神社 同 罔象女神
  • 貴船神社 同 高龗神 字兎渡より移転。
  • 水神社 同 罔象女神 字釣より移転。
  • 貴船神社 同 高龗神 字古賀浦より移転。


〔筑前國續風土記付録〕徳重村
雨森天神社 トリゴエ 少彦命、菅公二神を祭れり、社内に猿田彦、観音堂有。

雨森天神社は現在、緑町公民館・緑町公園の横に鎮座しています。住宅地のど真ん中ということで、子供たちの遊び声が聞こえてきました。

宗像市緑町に鎮座する雨森天神社
▲緑町公民館

宗像市緑町に鎮座する雨森天神社
▲神社全景

近隣の小祠を合祀していますが、それにしては小規模です。かつてはもう少し大きな社殿・神苑を有していたのでしょうが、宅地化によって縮小された模様。鳥居の奥には刻文の摩耗した石碑が一つ、右手には水盤・小祠・石碑類が置かれていました。

宗像市緑町に鎮座する雨森天神社
▲神社鳥居・末社群

宗像市緑町に鎮座する雨森天神社
▲鳥居奥に鎮座する謎の石碑(刻文は摩耗して読めず)

宗像市緑町に鎮座する雨森天神社
▲古い鳥居扁額・石碑類

やけに古い石造物が、この神社の古さを伝えています。この中には造成前の境内で使われたものや、合祀前の小祠に安置されていたものもあるでしょう。

しぶとく残る農村の歴史を垣間見たところで、昼下がりの緑町を後にしました。

撮影日:2023年3月19日

(参考文献)
伊東尾四郎編『宗像郡誌』上編160-161頁、深田千太郎、1944年
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